独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 翌日は、とてもいい天気だった。
 ピンクの園遊会用のドレスを着たフィリーネは、こっそりと窓から庭園に目をやる。気の早い令嬢達が、庭に集まり始めていた。集合時間まで、まだ一時間もあるというのに。

「……皆、なんであんなに早く集まっているのかしら」
「そりゃ、アーベル殿下が挨拶に来た時、目につく位置にいたいからですよ。まずは顔を覚えてもらわないといけないでしょう」

 フィリーネのつぶやきに耳をとめたヘンリッカがくすりと笑う。

「誰がどこに立つか、指示されていないの?」
「求められているのは、アーベル殿下を射止めないという気概ですからね。皆必死です」

 うわぁお、とフィリーネは口の中でつぶやいた。もし、アーベルの目に留まりたいと思ったなら、集合時間の一時間前から場所取りしないといけないのか。

(……私は、遠慮しておこうっと。それよりは令嬢達の真ん中にうまく入り込まなきゃ)
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