独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!

「私のドレス、今の流行からしたらちょっとフリルが多いかしら」
「フリルの多さのわりにスカートは細身かもしれませんね。でも、国によって流行って違いますしね。許容範囲だと思いますけど」

 フィリーネに並んで令嬢達を観察し始めたヘンリッカは、野鳥観察用の双眼鏡を標準装備しているようだ。今、観察しているのは、野鳥ではなくて、令嬢達だけれど。

「ええとですね……あの北側にいる女性の、ライラック色のドレス素敵じゃないですか? ほら、レースの襟の」
「なんであなた双眼鏡なんか持っているのよ」
「あら? だって、遠くからも観察する機会はあった方がいいでしょう。ほら、フィリーネ様の分はこれです」

 双眼鏡を持ってきていればよかったなと思っていたら、ヘンリッカはフィリーネの方に双眼鏡をもう一つ差し出した。双眼鏡のことまでは考えてもいなかったので、ヘンリッカのやり手ぶりに感謝しながらフィリーネも双眼鏡をのぞき込む。
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