独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「ありがとう! ライラック色も悪くないけれど……そこから少し離れたところにいる方の派手な黄色のドレスはどう?」
「あれはいけませんよ、派手すぎてフィリーネ様には似合いません」
「そうじゃなくて、袖口のレース。あんな風に重ねたら素敵だと思って」
「袖口のレースは参考になりますね……でも、腰のサッシュは検討が必要ですね。あのくらい太いものが今の流行だとすると、手持ちのドレスのサッシュじゃ細いです。街に出て、サッシュ用の布を買う必要が出てくるかも」
「おばあ様の時代には太いサッシュが流行してたはずよ。おばあ様のドレスの中に使えるものがあるかも」
窓からこうして皆の着ているものを観察するのはとても楽しい。夢中になっている二人の横で、やることのないパウルスはお茶係を買って出てくれた。
「僕、ドレスのことはわからないから、お茶をいれておくね。たぶん、フィリーネは食事をする余裕がないだろうから、何かお腹に入れておいたほうがいいし」
「パウルス、言葉遣いには気をつけて。今のあなたはフィリーネ様のいとこじゃなくて、従僕なのよ?」
「はぁい」
パウルスとヘンリッカのこういうやり取りを聞いているのも楽しいけれど、そろそろ準備をしなくては。