独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 ◇ ◇ ◇
 

「どうやって売り込むかが問題なのよねぇ……」

 城のバルコニーに椅子とテーブルを持ち出し、そこでレース編みにいそしんでいたフィリーネはため息をついた。

「十分な数の品をようやく用意できたけれど、いきなり輸出したって売れるわけでもないし」

 編み途中のレースをテーブルの上に置き、手すりの向こう側に目をやる。真っ先に目に飛び込んでくるのは、半分凍った湖だ。
 この国の名前と同じ名を持つユリスタロ湖。フィリーネにとっては、生まれてから毎日見てきた光景だ。
 フィリーネの髪は、秋に実る麦の穂のような金色。そして、瞳は夏のユリスタロ湖と同じ綺麗な青だ。
 下唇を突き出して、前髪をふぅっとふきあげてみる。そんなことをしたって、今の懸案事項が解決するわけでないのはわかっているけれど。

(今日は温かかったから、油断したかも)

 雪もだいぶとけてきたが、バルコニーで作業するのはまだちょっと早かったかもしれない。後悔しながらぶるりと身を震わせたその時だった。
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