独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 そして、このレースを作るのは三乙女の伝統を受け継いだユリスタロ王国の乙女達なのだ。
 身を乗り出すようにしてそんな説明を行うフィリーネに向かい、アーベルはにやりとして言い放った。

「お前、俺と組まないか?」

 アーベルの意味するところがわからなくて、フィリーネは目をしばたたかせた。組む? 彼と何を組むというのだろう。

「実のところ、この時季の社交は各国の有力者達と親交を深める機会でもあるし、有用な話はいくつも出るが、今回の催しはばかばかしいと俺は思っている」
「……はぁ」

 彼の話がどこに向かっているのかさっぱりわからない。

「その分、令嬢達に時間を割くのが惜しい」
「それはどうかと思うんですけど」

 アーベルが結婚しようとしないから、各国から選りすぐりの令嬢を集めるなんてことになったわけで。わざわざ集まってくれた令嬢達に割く時間が惜しいってちょっと傲慢だ。

「——でも、誰か一人、俺と仲の良い女性がいれば、そいつらの攻撃はかわせるだろう?」

 そういうものなのだろうか。あいにくと、恋愛には縁がないのでよくわからない。
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