独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
(やっぱり、ドレスの華やかさが違うわね……)
 フィリーネは、ソファのところで他の令嬢達を観察するのに忙しくしていたから、ライラがフィリーネのそばまで来たということに気が付かなかった。

「——あなた、アーベル様とはどんな関係?」
「ライラ様!」

 デルガド王国といえば、ユリスタロ王国の何倍もの領土を持つ豊かな国だ。エイディア大陸の中ではアルドノア王国に次ぐぐらいの国力を持っているだろう。そんな国の王女を相手にしているのだから、思わずフィリーネも飛び上がった。

「どんな関係と言われても——えっと、なんて説明したらいいんでしょうか」

 たずねられた時、どう返せばいいのかという打ち合わせを忘れていた。
 まさか、自分の口から『お気に入り』なんて言えるはずもないし——実にわかりやすくうろたえてしまう。

「……あなた、自分が本気でアーベル様に相手にされているなんて思ってないわよね」

(思ってませんけど。というか、最初からそのつもりもありませんけれど)

 とも言えるはずなどない。なんとかして、この場をやりすごさなければ。

「……私がまごまごしてたから、助けてくださっただけです。こういう場所には慣れていなくて……」

 結局、そう言ってごまかすしかできなかった。
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