独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「あら?」

 ライラの目が、上から下までじっくりとフィリーネを眺め回す。そして、どうやら自分の方が上だと判断したみたいだった。ふっと鼻で笑う。
 ここに到着した当日、馬車を降りた時とまったく同じように。あまり感じがよくないなとフィリーネは思ったけれど、ライラは気にしていないみたいだった。

「——そのレース、素敵ね。ドレスはまあまあという感じだけれど」
「でしょう? このレース、素敵でしょう?」

 たぶん、自分の方が上だということを自覚して出てきた誉め言葉だったのだろう。だが、フィリーネの受け止め方は違っていた。

「我が国の職人達が精魂込めて作ったもので——」
「ちょっと、私そんなことは聞いていないわ」

 ライラの両手をがしっと掴み、身を乗り出して勢いよく説明を始めたところで、まだ戻ってくるはずのなかったアーベルがこちらへと戻ってくる。

「おい」

 声をかけられ、ライラが立ち上がった。
 だが、そんなライラには見向きもせずアーベルはフィリーネに向かって手を差し出す。
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