独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 フィリーネと初めて舞踏会に出る日、アーベルは自分からフィリーネを迎えに行くことにしたのも、『お気に入り』という評判を立てるためのものでもあった。
 そうしておいて、他の国がどんな行動に出てくるのかというのを見たいというのもアーベルの意図に含まれていた。

(いくつか気になる国はあるが、一番気になるのはデルガド王国か——)

 母は、デルガド王国のライラを迎えたいという意思が強いらしい。たしかに、デルガド王国といえば、エイディア大陸内においてもかなりの影響力を持つ国だ。

 ライラを王太子妃、未来の王妃として迎えれば、デルガド王国とのつながりを深めることにもなる。

 デルガド王国には、最近、あまりいい噂がないのだが、母の耳にはその噂は届いていないのだろうか。
 アーベルがライラとの縁談に気が進まないのと同様、父はどちらかと言えば、ライラとの縁談には消極的であった。ライラを押しているのは母だけだ。

 周辺諸国の人材の交流を、アルドノア王国で行うようになってから、この大陸は平和を謳歌している。大きな戦は何年も起こっていないが——その裏では、小国の産業が、大国につぶされるという事例もいくつも発生していた。
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