独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
他国の内政にまで干渉することはできないが、このままでは、つぶされた小国の側は面白くないだろう。
その中心になっている大国が、デルガド王国ではないかという懸念をアーベルは持っていた。
(最終的には、父上の判断を仰ぐことになるわけだが)
だから、ライラは当面適当にあしらっておけばいい。そう思っていたのに、またフィリーネが思いがけない行動に出る。
「アーベル様ってば横暴! 嘘つき! レースの売り込みに協力してくれるって言ってたのに!」
ダンスは下手なのに、口はよく回る。思わずにやりとしたら、フィリーネはつっと視線を落とした。
——面白い。
彼女にとって、どうやら自分はレース以下の存在らしい。それならなおさら好都合だ。もう一つ、手を打っておこうか。
「フィリーネ。一つ頼みがあるんだがいいか?」
「なんでしょう? 私にできることなら」
頼みがあると口にすれば、素直な顔でフィリーネはこちらを見返してくる。
「明後日、お前を散歩に連れ出そうと思う。その時、着るドレスをしばらく貸してくれ。数時間でいい」
「それは、かまいませんけれど……」
彼が何を目的に、そんなことを言い出したのかたぶん、彼女はわかっていない。けれど、実現した時に彼女がどんな顔をするのか見てみたいような気がした。
その中心になっている大国が、デルガド王国ではないかという懸念をアーベルは持っていた。
(最終的には、父上の判断を仰ぐことになるわけだが)
だから、ライラは当面適当にあしらっておけばいい。そう思っていたのに、またフィリーネが思いがけない行動に出る。
「アーベル様ってば横暴! 嘘つき! レースの売り込みに協力してくれるって言ってたのに!」
ダンスは下手なのに、口はよく回る。思わずにやりとしたら、フィリーネはつっと視線を落とした。
——面白い。
彼女にとって、どうやら自分はレース以下の存在らしい。それならなおさら好都合だ。もう一つ、手を打っておこうか。
「フィリーネ。一つ頼みがあるんだがいいか?」
「なんでしょう? 私にできることなら」
頼みがあると口にすれば、素直な顔でフィリーネはこちらを見返してくる。
「明後日、お前を散歩に連れ出そうと思う。その時、着るドレスをしばらく貸してくれ。数時間でいい」
「それは、かまいませんけれど……」
彼が何を目的に、そんなことを言い出したのかたぶん、彼女はわかっていない。けれど、実現した時に彼女がどんな顔をするのか見てみたいような気がした。