独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「何かの間違いじゃないの?」
「そんなことないって。フィリーネ様、そんなに悪くないし」
ヘンリッカは、フィリーネの手を握りしめたまま笑う。フィリーネは頬を膨らませた。
「そんなに悪くないしって……一応、私、王女なんだけど」
「それを言うなら、私だって一応伯爵令嬢だわ」
「それもそうだけど。でも、何かの間違いだと思うわ。真面目に考えたら、私をアルドノア王国の王太子妃になんてありえないでしょ」
「その話をしているなんて耳が早いね。フィリーネに招待状が届いたのは間違いじゃないよ」
「パウルス、あなたどこから湧いて出たの」
二人の会話に、するりと紛れ込んできたのは、フィリーネのいとこであるパウルスだ。
現王妃であるフィリーネの母親の弟の息子であり、侯爵家の令息である。とはいえ、彼もまた畑仕事の合間には狩りに精を出す猟師である。きっと、城に今日の獲物を届けに来てくれたところなのだろう。