艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「……俺は、一緒に居る時間が増えるから嬉しいけどね」
彼が腰を屈め、私の頬を手の指で撫でて首筋に降りると顎を支える。目を閉じれば、唇が重なった。
もう、キスで狼狽えることはなくなった。だけど、言葉で言い表せないせつなさや痛みが、その度強くなる。
ゆっくりと味わったあと、少しだけ唇を離し彼が問いかける。
「大丈夫? 泊まっていくの?」
「はい。ゲストルーム、使わせていただきます」
「じゃあ、今日はゆっくり過ごそう」
満足そうに笑って、もう一度キスしたあと、彼がじっと、私の表情を窺った。
「なんですか?」
「いや……最近、よくそんな顔をする」
「え?」