艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「柳楽堂が花月庵を欲しがってたのもこのためだろうね、確かな信頼と力のある顧客を持ってる花月庵を取り入れてダメージを抑えたかったんだ。見え見えだよ」
そう言うと彼がリモコンをテーブルの上に再び置いて立ち上がる。少しも驚きを見せない彼を見上げて、思いついたことをそのまま口にした。
「……知ってたんですか? もしかして」
「食品偽装のこと? 噂はね」
本当に噂だけ?
確信を持っていて、いずれ露見するとわかっていたんじゃないのだろうか。
立ち上がって、リビングを出ていく彼の背中を見つめる。
「……助けてくれた?」
理由はわからない。
わからないけれど、声に出したらそれが真実に近いような気がした。
だって、兄も柳川さんも言ってた。
葛城さんによる花月庵の買収は、本当に突然だったって。