艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
ネクタイと上着だけ引っ掛けて、寝室からはすぐに出るつもりだったのだろう。
照明はまだつけられていなくて部屋は薄暗い。陰影の濃い葛城さんの綺麗な顔に、何かぞくりとするものを感じて慌てて俯いた。


「無防備って、だって」

「なに?」

「……信頼、してます。だって、夫婦になるんでしょ。それに」


責められているような気がして、少し納得がいかなかった。どきどきと忙しない胸を抑えながら、俯いたままで言い返してしまう。


「き、キスとか、そういうの教えたのは葛城さんなのに。今度は無防備だって言われても……」


急に距離を置かれた気がして不満だったこともあり、拗ねた口調で言わなくてもいいことをぼやいてしまった。
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