艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
長い座卓を挟んで、父の正面に座る。


「馬鹿ですみません。何も教えられずに育ったもので」


そう言い返すと、ぴき、と空気が凍り付く。
本音でもある。父の言いつけか、母だって何も店のことは教えてくれなかったし、それ以前にふたりとも忙しすぎて相手にしてくれなかった。代わりに私に躾や作法など、教えてくれたのが祖母だったのだ。


「その年になってから反抗期か」

「そういえば私の反抗期、知らないですよね、お父さんは」


応戦している自分も鳥肌が立ちそうなほど、仏間が冷気に満ちている。
覚悟して来たものの、いつも親子喧嘩の時は、言い合いの途中でどちらかが面倒になって背中を向けることが多かった。


だけど今日は、そういうわけにはいかない。そして喧嘩をしにきたわけではないのだ。
ついいつもの調子でやり合っているが、落ち着かなければと深呼吸をした時だった。


「お前があの男とあちこちに顔出してから、店にも影響が出てる」


< 211 / 417 >

この作品をシェア

pagetop