艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「気が付いたら、翌日には花月庵の株を買い占めてた」


この時だけはまるで笑い話のように彼は楽しそうだった。


だけどつまりそれは、やっぱり柳楽堂から花月庵を守るためだったということだ。
花月庵と私を。


「そっ、それならそれで、最初から言ってくれたら良かったじゃないですか!」

「不意打ちで買収しておいて? 君のお父さんやお兄さんが警戒するのも無理はないし、君だって信じるわけがない。だから一芝居打ったんだ」


彼が私の手を持ち上げて、手の甲に口付けた。
そのまま私を上目に見た彼の目は、捕獲者のように鋭くもあったし悪戯が成功した子供のようでもあった。


「君が自分から、俺のもとに飛び込んで来るように」


そして私は、まんまと捕まった。

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