艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「もっと君のことが知りたかったし、俺のことを見てほしかった。去年、一度だけ遠目に目が合ったときの大きな目が印象的で」
「ま、待って、そんな、ほとんど知らないのに……」
「そうだね、今思えば一目惚れだったのかもしれない。だけど知れば知るほど、君が欲しくなった」
どうしても、狼狽えてしまう。自分がそんな、一目見ただけで誰かを惹きつけるほど魅力がある人間だと思ったことはなかった。
けれど、彼はまるで自分が間違っていなかったとでも言うように、誇らしい目をしていた。
「間近で見た君は、思っていたよりずっと気が強そうで、喋ればもっと」
指に丁寧に口づけながら、彼はひとつひとつ、言葉を交わすようになってからの私の印象を上げていく。
「凛として大人っぽいかと思っていたけど、素の君は少し、子供っぽい」
「わ、悪口じゃないですか、それ」
「そう? 好きなところを上げて口説いてるつもりなんだけど」