艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「ごめんなさい。お手洗いに言ったあと、話がちょっとだけ聞こえて」
「いや、俺の方こそごめん。実家に行く前に説明しておけば良かった。同級生でね。最近職を失って、こっちで働き口を世話したんだ。実家が近所で付き合いもあるしね、放っておけなくて」
「近所ってことは、幼馴染みたいな?」
「そこまで仲良くはなかったけどね。一緒にいる友人も違ったし……まあ、小中高と学校が一緒だったくらいだけど、それも幼馴染と言えるならそうかな」
さらさらと、狼狽えることなく話してくれたことで、少し心が軽くなる。
「葛城さんの会社に?」
「そうだよ。事務作業をしてもらってる」
「そうですか」
だがもやもやが完全に消えたわけではなかった。
だけどこれ以上、何を聞けばすっきりできるのかわからない。