艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「母が勝手に邪推をしていただけで、彼女とは今も昔も何もないよ」
私もわからない胸の内を察したように彼が言う。
「あ、別に! 何も、疑ってないけど……」
慌ててそう取り繕ったが、赤くなった顔が気にしていると暴露したようなものだった。
「……ちょっと。こういう話は運転中じゃなく」
「え」
「そんな顔されてもキスもできないし抱きしめることもできないし」
くしゃ、と嬉しそうに笑ってそう言われ、私は頬に手を当てる。
「……運転してください」
なんか。ヤキモチを妬いてしまったみたいで恥ずかしい。
唇を尖らせて窓の外へ視線を逃したけれど、赤い顔はなかなか静まらなかった。