艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
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神戸観光と葛城さんの実家訪問から二週間が経ち、梅雨も明け夏真っ盛りだ。
あれから、葛城さんのご両親が本当に素早く私の両親に挨拶してくれて、正式に婚約という形になった。
なのに私の心の中は、何かまだ薄雲が張ったようなものだった。
後から思えば思うほど、小さなひっかかりが出てくるのだ。


些細なことだと思う。
だけど後から思えば思うほど、小さなひっかかりが出てくるのだ。


『藍たんがモチを焼いておられる』
『たん言うな』
『あーっ! なんかいいなあ、恋をする藍ちゃん新鮮』
『気になるのすごいわかる。幼馴染とか最強じゃない?』
『しかも困ってるとこ助けたとかなると気になって当然』
『そう? 私はそこで手を貸さない薄情なやつじゃないってわかってほっとするけど』
『だって同じ会社にいるんでしょ? 毎日一緒とかだったらかなりイヤ』


相手が会社経営者であること、知り合ってまだ間がないことを伝えて改めて友人たちに相談したのだが、良かった。


そうか、やっぱり私は嫉妬していたのか、と。人に指摘されれば改めて納得した。
だから過剰に気になっているだけなのかもしれない。
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