艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
『……まあ、人生一度きりだし。騙されるのもいいんじゃない?』
『誠実なイケメンってドラマの中くらいしかいないと思うわ。多少は諦めて』
『なんかイケメンで痛い目にでもあったことあんの? でも私もそう思う』
「ちょっ……!」
ぱぱぱっと上がったメッセージはいきなり冷たくなった。
『ってか寝顔って惚気か! 藍のくせに!』
藍のくせにとかひどくない!?
冗談だということはわかっているけれど、見たいというから見せたのにあんまりな反応で、しかも最終的に、後日私の驕りで集まるということが勝手に決まってしまったのだった。
マンションまであと少し、歩きながらメッセージのやりとりを思い出し「みんなひどい」と独り言を呟いたときだった。
「藍ちゃん!」
どこかで聞いた声にいきなり呼び止められ、手を掴まれた。
「えっ」
驚いて立ち止まる。
「や、柳川さん? どうしたんですかこんなところで……」
そこにいたのは、少しやつれた柳川さんで、覇気がなく一瞬誰だかわからなかった。