艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「……なんか、方法はないのかな」
「まあ……俺は、従業員が路頭に迷うようなことにさえならなけりゃそれでいいと思ってんだけどな」
「お父さんは黙ってなさそうだね……」
「親父の気持ちはわかるけど、経営不振に陥ったのは花月庵に力がなかったからだ。古い絆と歴史だけに頼り過ぎたとこはあると思う」
兄は意外に冷静で、シビアな現実を淡々と口にした。だけどそんな風に言われたら、ますますもうどうすることもできないのだと言われているような気になってくる。
部屋の真ん中で胡坐を掻く兄は、溜息を吐きながらもどこか達観して現状を受け入れているように見えた。