艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
兄は幼い頃からお菓子作りを仕込まれてきた。私よりずっと、厳しいことを言われ続けて育ったのだ。
だけど、その分、花月庵に対する思い入れは私よりずっと強いはずなのに。悔しくないはずはないだろう。
そんな兄を見ていれば、本当に私はこのままでいいのかと、焦燥感を掻き立てられる。
父の言う通り、本当に、このまま無関係でいていいのか。
私はひとつ、覚悟を決め、口を開いた。
「お兄ちゃん、葛城さんとは話したことあるの?」
「ん、ああ。今後の花月庵の経営のことについてと、お前との縁談を持ち込みにうちに来た時にな、親父と一緒に会った」
「ねえ、向こうはうちの株を買い占めたなら、経営権を握れるんでしょ? だったら、なんで私との縁組まで言い出すの?」