艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
視界を二階から階下へと移す。
踊場に葛城さんが倒れているのが見えた。


さっきの男の人が、懸命に声をかけている。


「誰か救急車呼べ!」


そんな大騒ぎになっているというのに、葛城さんの身体は起き出す気配もない。


「……葛城さん?」


私の腕を引いたその反動で、彼が代わりに落ちたのだ。
やっとその事に気がつき、立ち上がろうとしても膝ががくがく震えた。


私のせいだ。
こんなヒールで無茶したりしたから。


大人しくしてないから。
柳川さんに会ったこと、ちゃんと話していたらそもそもこんな事態にもならなかった。


ごめんなさい。
ごめんなさい。


後悔に苛まれながら、お願いだから起きてと祈った。


「葛城さん……っ!」


震える手で手すりにすがって階段を降りる。
その間も、彼はぴくりとも動かない。


落ちる直前の笑顔が頭の中に焼き付いていた。
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