艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

思えば、祖母もそうだったのだ。
親に言われるままに嫁ぎ、店を守ることを仕事とした祖母は、祖父と仲睦まじかった。そんな時代があったのだ。


だから、私も黙って微笑んだ。
葛城さんの隠し事を、私は知らないふりをすることにしていた。
いつかは、笑い話で話すこともあるだろう。
子供に聞かせて、葛城さんを驚かせるのもいいかもしれない。照れる表情が見れるかもしれない。
この先ずっと、ふたりで歩くのだから、何も急ぐことはないのだ。
そんな風に、葛城さんの隠し事は、こっそり私の隠し事に変わった。



明日から仕事に復帰する、という日。
訪ねてきたのは、朝比奈さんだった。


御手洗さんを預けた知人とは、朝比奈さんのことだったらしい。

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