艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「いらっしゃいませ」
慌てて声の方へ向き直れば、年配の女性がギフトセットが並ぶ陳列棚の前に立っている。口元に手をあて五千円と七千円のギフトを交互に見つめていた。
「お届けものですか?」
笑顔を浮かべて頭を切り替え、歩み寄る。とにかく今は、待つしかないのだから仕事に専念しなければと、脳裏にちらつく、綺麗だけれど本音の見えない微笑を追い払った。
そう、私は葛城さんからの連絡を待っている。
『後日書面で』と言っていた、彼からの連絡を待っているのだ。
その日は早番で、まだ少し明るいうちに仕事を終え家に着く。
夕食は何にしようかと、冷蔵庫を開けて作り置きのおかずのタッパーを選んでいる時だった。ピンポン、とインターホンが鳴った。