艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
書類か何かだと思っていたが、目に入ったのは字面を中に三つ折りにされた和紙で、首を傾げる。広げてみれば、達筆な文字が目に入る。間に挟まっていたのか、ひらりと名刺が私の膝の上に落ちたが、それには目もくれず文面を追っていた。
「……何これ」
読み進むにつれ呆気にとられる。それは、残念ながら私が期待していたようなものではない。読み終わる頃には馬鹿にしているのかと腹が立った。
「こっちは真剣に待ってたのに!」
バン! と勢いよく置いたその書面は、所謂『釣り書』というやつだ。お見合いの打診の段階で、相手に渡すもので、名前と生年月日を先頭に住所や学歴、現在の勤務先から、趣味や特技、身長体重まで『葛城圭』という人物のことが記されてあった。
年は私の五つ上の二十九歳、誰もが知る有名大卒、身長百八十五センチで体重は七十二キロ、多分理想的な数字じゃないだろうか、確かにスタイルは良かった。
趣味は旅行だそうだ。
……知るか!
膝の名刺を手に取れば、携帯の番号が書いてある。苛立ちに任せてスマホを手に取り、迷わずその番号を入力して発信した。