艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
面会時間は、夜の八時まで。
あと三十分もない、と言う頃に病室のドアがノックされ、圭さんが入ってきた。
「圭さん、お仕事大丈夫なんですか?」
「そんなことは心配しなくていいよ。和香は新生児室?」
「はい。初日の夜は預かってもらって、明日から同室になるって」
ベッドに座る私の横に、彼も腰を落ち着ける。
頬に手が伸びて包み込み、親指が優しく頬の肌を撫でてくれた。
「今日は、お疲れ様」
労わりの言葉をくれてほっと心が温かくなる。手が心地よくて、目を閉じた。
「圭さんも。昨日ほとんど寝てないのに、慌てさせてしまって」
「いつでも調整可能なようにしてあったから問題ないよ」
「でも寝不足で大変だったんじゃ?」
「君の方がもっと大変だった」
お互いに言い合って、ふふ、と笑う。
「お疲れ様でした」
「うん、お疲れ様」
それから頬の手が首の後ろに回って、抱き寄せられるままに彼の肩に頭を預けた。
とても疲れた。
だけど、大きなことを成し遂げたような、とてつもない達成感がある。
それからふたり、しばらく無言で寄り添い合ったあと、彼がぽつりと零した言葉は、私の生涯の宝物になる。
「ありがとう。君から幸せが生まれてくるみたいだ」
胸に温かく沁みて。
泣き笑いのようになってしまって、上手く笑えず、閉じた瞼からほろりとまた一つ涙が零れる。
温かな涙だった。
END


