艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
そんな私が、この人に会って都合よく事情を聞き出し、何が花月庵の為になるのかちゃんとその時判断できるのか。
良い様に丸め込まれてしまったら?
怖気づいて声が出ないまま、数秒が経過する。
そんな私の背中を押したのか、もしくは唆したのだというべきか。
『……君は随分、過保護に守られてきたようだけど。それに納得はしていないんじゃないのかな』
さっき私が声を荒げた意味を、彼は正しく読み取っている。
『だったら一歩、君から踏み入るなら今しかない。次の休みはいつ?』
「……来週、水曜です」
『じゃあ、昼の十一時に。この間と同じホテルのロビーで』
「えっ、あ、待って」
『店を予約しておくよ』
じゃあ、とそのまま通話が途切れてしまいそうな気配に、慌てて引き留めた。
「ちょっ、私行くなんてまだっ……」
『待ってるよ』
私が来ると、彼は確信している。
約束の時間と場所を決めて、一方的に通話は切れてしまった。