艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
無機質な音しかしなくなったスマホの画面をタップして、通話画面を閉じる。
スマホをテーブルに置いた途端、どっと力が抜けて深く長い溜息を吐いた。


勢いにまかせて電話してしまったけれど、酷く緊張していたらしい。脱力感が半端ない。


「……何、この疲労」


ぐてん、とローテーブルの上に突っ伏し上半身を預ける。心臓が、いまだかつてないほどに働いている。あの人と、ちょっと電話で話しただけで。


「……本気?」


本気で、あの人は私と結婚する気なんだろうか。


ただ電話で話しただけでこんなに疲れる人となんて、今は正直『ムリ』の一言しかない。結婚生活ともなれば毎日顔を合わせるのだ。間違いなく寿命が縮む。


一生のうちに心臓が打つ鼓動の数は決まってるとか上限があるとかいう話は本当だろうか。
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