艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
テーブルの上に落ちていた葛城さんの視線が、上向いて私の視線と交わる。
何か考え事をしていたのか、優しく浮かんだ微笑みが何か取り繕ったようにも見えた。


「いえ、特に」

「本当に? 時間がかかったみたいでしたから」

「ああ、車が来るのが少し遅れたからかな。お待たせしてすみません」


……笑顔のガードだ。


そう感じるのは、恐らくはビジネスモードだと思われる敬語が抜けないからかもしれない。


プリンの最後のひとくちを口に運びながら、ついじっと凝視してしまっていると、彼はくすりと苦笑いする。その時ちょっとだけ、気の抜けたような雰囲気だった。


「穴が開きそうだな。そんなに睨んで、何か見える?」

「見え辛いから睨んでるんです」
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