艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「すみません、いただいてました……美味しいです」
「それは良かった」
テーブルを廻り、元居た席に着くまで彼を目で追う。プリンは残り半分。
葛城さんは、コーヒーに砂糖もミルクも入れずブラックのままでカップを持ち上げる。
さっき、祖母が居た時までは沈黙があまり目立たず、彼も饒舌だったイメージなのに。戻ってきた彼は、黙ってコーヒーを啜っていた。
「あの。祖母を車まで送ってくださって、ありがとうございました」
沈黙にそわそわと居心地の悪さを感じ、私の方から話を振る。
「祖母、何か言ってましたか」
戻って来るのが遅かったことも、祖母が敢えて葛城さんとふたりになったことも気になっていた。