艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
こどもの頃はめんどくさいと思ったけれど、大人になってみれば身に付けておいて良かったと思うシーンが度々ある。
例えば、今この場においてだとか。
「……そういえば仰ってたね。どこに出しても恥ずかしくない娘に育てたと」
そう言った葛城さんはなぜか私から目をそらし、少し皮肉るような表情だった。
「なんですか?」
「いや。でも、作法だけのことではないよ」
「え?」
再び私に視線が戻ったとき、表情は元の穏やかな微笑みに戻っていた。
気のせいだったか、と、首を捻る。
「きっと、気質が顕れてるのかな。真っ直ぐ張られた琴の糸のようなイメージがある」
抽象的なその言葉は、私の内面を指している。
穏やかな微笑みに真っ直ぐ見つめられて、あまりの恥ずかしさに俯いてしまった。