Jewels
工房を出て行ったばかりの翠玉が、慌てて戻ってくる。


「琥珀、隠れて!」

「なんだ?どうした?」

「兄様たちが戻ってきたの、黄金さんに見つかっちゃう!」


翠玉は琥珀を押し込むようにして、2人で工房の奥へと隠れた。


ほどなく、黄金と作業着姿のままの金剛、そして目の覚めるような紅いドレスを身にまとった姫が工房へと入ってきた。
翠玉より若干赤めの褐色の髪を高く結い上げ、凛とした顔立ちを際立たせている。

紅玉姫だ。

紅玉は見たことの無いものを見る様子で、工房内を見回している。
立ちこめる埃に少し困惑しているようだ。
黄金が申し訳なさそうに身を丸め、しきりに紅玉に語りかけている。


「紅玉様の方から足を運んで頂くなど、恐悦至極にございます。誠に申し訳ありません、金剛様が遅れてしまったのは、この黄金の監督不行届きだったのでございます。」


金剛はまだ不機嫌な様子だが、紅玉の手前、抑えているようではあった。


「黄金、恥をかかせるな。お前に監督されているなぞ、俺がまるで子供の様ではないか。」

「いえいえ、滅相も無い。決してそのようなつもりで申したわけでは…。」

「黄金さん、もう良いのです。こちらから出向いたのはわたくしの我侭、むしろわたくしが謝罪すべきことです。突然の来訪、お許しくださいませ。」


紅玉は優雅な仕草で頭をさげる。

姉の完璧な姫っぷりに、物陰で見ていた翠玉はやりきれなさを感じた。

第一王女として育てられた紅玉と違って、自分は奔放な性格であったし、王族としての気品もきちんと身に付けていない。

今だって、せっかくのドレスを土埃まみれにしている。

翠玉は密かにため息をついた。

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