Jewels
頭を下げた紅玉に対して、黄金はあわてて言葉を続ける。


「紅玉様、面をお上げ下さい。こちらの不手際が原因なのですから。」

「黄金、そう不手際不手際と言うな。会えたのだから良いではないか。どちらが来ようと問題ではない。」

「お言葉ですが金剛様、姫君に足を運ばせて、恥ずかしく思わないのですか?申し訳ないと思わないのですか?」

「申し訳ないに決まっているだろう!いちいち聞くな!」

「それが申し訳ない態度ですか!」


一国の王子と侍従との会話とは思えないやりとりに、奥の部屋の2人はこっそりと頭を抱えた。

子供のように喧嘩を始めたふたりをなだめようと、紅玉が穏やかに声をかける。


「黄金様?勝手に出向いたこちらが悪いのです、金剛様を責めないで下さいな。」


黄金は驚いた様子で紅玉を見上げ、そして次第に顔をぐしゃり、と崩した。


「紅玉様…誠にお優しい…この黄金、思わず涙が…」

「泣くな黄金!みっともない!」


金剛は恥ずかしさを隠しきれず、黄金に大声をあげる。
しかし黄金は切々と金剛に言って聞かせる。


「金剛様も感謝なさいませ、金剛様の我侭を容認して下さる姫なぞ、滅多におりません。紅玉様のように寛大な婚約者をお迎えできることは、この上ない幸せなのですよ?」

「解った!解ったから泣くな!これ以上俺を辱めるな!」

「申し訳ございません、歳のせいか、涙もろくなりまして…」


涙に濡れた黄金の顔はひどいことになっていた。
金剛は呆れた調子で言う。


「そもそもお前は何故ここにいる?今は俺と紅玉姫の逢瀬の時間のはずだ。供は要らぬ。お前は席を外せ。そしてそのみっともない顔を洗って来い!」

「おお、申し訳ありません、不粋なことをしてしまいました。では黄金は少々お暇致します。紅玉様、汚いところですが、どうぞごゆっくり…」


黄金は自分の失態に改めて気付いたようで、大げさなしぐさで頭をさげると、背を丸めてそそくさと部屋を去った。

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