Jewels
「それに、わたくし、見てみたかったんです。金剛様の工房。」

「ここですか。」


紅玉は工房内を物珍しい様子で見渡す。
彫られている最中の大きな石、石を彫る道具、石を磨く道具…見たことのない物ばかりだった。
さすがに土埃で汚れた壁や机を触る気は起きないようで、手や足の置き場にいちいち迷っている様子である。


「ええ。妹はしょっちゅう出入りしているようだけれど、私は一度も見たことが無いでしょう?金剛様は石彫がお好きだって、聞いて知ってはいるけれど、婚約者のわたくしが一度もその現場を見たことがないなんて、悔しいですもの。」

「そんなに面白いものではありませんがね。」

「そんなことありませんわ。初めて見るものばかりで、興味深いです。」


紅玉は強気な視線を金剛に送ってみせる。
そういう強がりが、実に紅玉らしかった。


「意外と好奇心が旺盛なのですね。」

「あら、そうは見えませんでした?わたくし、好奇心の塊ですのに。」

「少なくとも、こんな汚い工房を好むようには見えませんでしたよ。」

「金剛様がお好きな場所なら、わたくしも好きになりたいわ。」


ゆっくりと工房を歩いて眺めていた紅玉は、いつのまにか金剛との距離を縮め、すぐ正面に立っていた。

金剛の首に手を回すと、その小さな頭を優美に傾げ、魅惑的な表情で見つめる。
長いまつ毛にふちどられた、ルビーのように輝く瞳、薔薇の花弁のような形の良い唇。

ふわりと、花の香りがした。

普通の男ならあまりの魅力に落ち着いてはいられないだろう。

が、金剛は努めて冷静に微笑んだ。


「…今日は随分とご機嫌が宜しいようですね。」

「久しぶりに金剛様と2人きりでお会いできたんですもの。」


紅玉は満足気に微笑むと、目を伏せ、静かに金剛に顔を寄せた。


その時だった。

ガタン!

大きな音と共に、部屋の奥に隠れていた琥珀が飛び出してきたのだ。
正確には、翠玉が琥珀を押し出した、と言った方が正しいが。

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