Jewels
顔を真っ赤にして転がっている琥珀に、金剛は事も無げに話しかけた。


「なんだ、いたのか。」

「ああ、いや…」


紅玉は金剛から離れ、赤くなる顔を必死で平静に保とうとしている。

その逆に金剛は何も無かったかのような表情だったのが、琥珀にとっては更に気まずかった。


「どうした?」

「いや、その、邪魔してすまん。」


琥珀は部屋の奥へ逃げようとする。
工房の奥にはもうひとつ小さな部屋があり、出来上がった石細工や、まだ細工されていない原石がたくさん置かれている。
琥珀はその部屋の窓から出入りしているのだ。

出て行こうとする琥珀に気付いて、金剛は琥珀の腕を掴んでを引き止める。


「待て待て、構わん。」

「いや、でも…。」

「金剛様?そちらの方、どなたですの?」


紅玉は明らかに機嫌を損ねた口ぶりで尋ねる。


「採掘工の琥珀です。俺と個人的に取引をしている。」

「採掘工?石を掘っている方?」


紅玉の眼がいぶかしげに琥珀を見つめる。


「掘った石の中でも良いものを、こっそり俺に売ってくれているんですよ。琥珀、石を持ってきたのか?」

「あ、あぁ、この前欲しがってたやつを。」


琥珀は、困った様子で紅玉と金剛の顔色を交互にうかがっている。

金剛は琥珀と紅玉を置いて、奥の部屋へ移動しようとしていた。

紅玉はすぐに呼び止める。


「金剛様。どちらへ行かれるのです?」

「こいつの持ってきた石を見てきます。」

「お供しても?」

「いや、あっちの部屋はもっと汚くて。すぐに戻りますから、姫はここでお待ちを。琥珀、少し相手をして差し上げろ。」

「俺が!?」


思いがけない提案に目をみはる琥珀に、金剛は悪びれない様子で笑いかけ、肩をたたく。


「姫君と話せる数少ない機会だぞ?」

「いや、でも…。」

「紅玉姫、一般庶民と話すのも悪くないですよ。少しこいつと話していてください。」

「金剛!」


戸惑い引き止める琥珀と、寂しげに見つめる紅玉を後に、金剛は奥の部屋へと消えていった。

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