Jewels
「とにかく、金剛の差し金で、紅玉様がお前を好きになるようなことがあったら万々歳だろう。」


楽しそうに盛り上がる瑪瑙をよそに、琥珀は冷静だ。


「身分が違いすぎる、無理だよ。」

「まぁなぁ。」


琥珀は思う。

自分には触れることさえ叶わない高潔な姫。

幸せにして差し上げるのは金剛の役目、それはもう決まっている。

それならば、自分にできることは、金剛をできるだけ紅玉様ときちんと向かい合わせることだ。


「俺は紅玉様が幸せならそれでいい。だから金剛には逃げないでほしいんだ。」


琥珀の純真な視線に、瑪瑙が意地悪く、そそのかすように囁く。


「お前なぁ、紅玉様を捕まえたら、王族の仲間入りができるかもしれないんだぞ?」

「王族の身分に興味は無いな。」


琥珀のあっさりとした返事に、瑪瑙は残念そうに言う。


「欲の無いやつだなぁ。」

「金剛を見てるとよく分かる、窮屈なだけだよ。」

「だが、こうやって汗水たらして働かなくても、極上の石が手に入るんだぞ?いい身分じゃないか。」

「自分の手で石を見つけ出す方が俺は楽しい。」

「ふぅん、お前は変わってんなぁ。」

「瑪瑙が欲深いだけだろ。」

「俺か?俺は…そうだな。」


瑪瑙は意味深に笑む。

そこへサイレンが鳴り響いた。
仕事が終了する合図だった。


「じゃ、お疲れ。」

「おう。」


琥珀と別れ、ひとりになった瑪瑙は、何か真剣に思索しているようだった。

< 33 / 72 >

この作品をシェア

pagetop