Jewels
しばらく琥珀の胸で泣いていた紅玉は、静かに身を離す。
琥珀は慌てて手を放し、背筋を正した。
顔を上げた紅玉は、凛とした面持ちを取り戻していた。


「ありがとう。助かったわ。」

「いえ、俺でお役に立てることがあるのなら。」


琥珀ははにかんで答える。
自分にも、紅玉のためにできることがあった。
こみあげる幸福感を隠せなかった。

紅玉はそんな琥珀を見つめ、しばし視線をさまよわせて逡巡した後、口を開く。


「琥珀、採掘場とやらに連れて行ってもらえるかしら?」

「え!?」


紅玉の思いも寄らぬ提案に琥珀は驚きを隠せない。
翠玉ならまだしも、紅玉のような姫が来て楽しい場所ではないのだ。


「今日はどのみち、金剛様には会えないもの。代わりに相手をして頂けないかしら?金剛様が興味を持っているもの、少しでいいから見てみたいの。」


紅玉は優美に首を傾げ、笑みを浮かべる。

琥珀に、逆らう余地は無かった。

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