借金取りに捕らわれて 2
少し先を歩く秋庭さんとの距離を詰めようと足早に後ろを付いて行き、そこで私はある事を思い出し彼の背中に声を掛けた。


「そう言えばさっき、秋庭さんが来る少し前にここで京輔さんって方に会ったんですけど、秋庭さんに」


だが、言い終わる前に急に秋庭さんが振り返り、ぶつかりそうになった私は続く言葉を飲み込んだ。


体は寸での所で止まることが出来たが、その僅かな距離を詰めた彼の腕が私の腰を捕まえ、防衛本能からか咄嗟に彼の胸に両手をついた。


せめて一歩後ろに下がりたかったが、腰に回されているのは片腕だけなのに、全く身動きがとれない。


「秋…庭さん?」


見上げた顔は静かに怒っているような、機嫌が悪いようなそんな顔で、恐る恐る呼んでみれば今度は呆れた感じの溜め息が返される。


「どうして京輔も下の名前で呼ぶんだ。」


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