秘密の約束。
「あのね…」

ごくりと生唾を飲む。

あたしは緊張していた。

何を言われるかわかんなかったけど、悪いことのような気がした。


「苺香ちゃんがよかったらあたしたちの家で一緒に暮らさない?いちかちゃん1人では家賃も水道代も光熱費も払えないと思うし、やっぱり大人の力は必要だと思う。」


あたし的には悪い話じゃなかった。

だけど、この家と離れたくなかった。

あたしが生まれた時から住んでるこの家。

お父さんとお母さんとの思い出がつまったこの家。

おばちゃんはまたいつものおばちゃんみたいに、にこっと笑ってみせた。

そしておばちゃんはあたしの好きなシュークリームを置いて「じゃあね」と言って帰った。


どうしよう。

心の準備ができてない。

でも、この家でいつまでも悲しんでる訳にはいかない。

貯金はあるけど、その内つきるに決まってる。

やっぱりおばちゃんの家に住ませてもらうか…。

考えても考えても解決する方法は見つからない。



ピーンポン



また誰か来た。

次は学校の先生かな。

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