おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
潤くんの肩にもたれながら、いつも通りDVDを見ている。
CDやDVDがキレイにずらり立ち並ぶこの部屋にもすっかり来慣れた。
夕方の優しいオレンジの陽射しが徐々に黒に包まれていく。
DVDの明かりだけの部屋で、ふたりはあと一歩先へ……
そんな雰囲気になっていた。


-たいくつ-
なんて表現した状態から抜け出せるかもしれないのに…
ドキドキも緊張も、熱くなった身体も好きの気持ちも、全部揃っているのに…
仰向けになって見上げた潤くんの姿に、またいつかのあの面影を重ねていた。


そしてそれ以上に…


-潤にも負けたくない
オレはあこちゃんが好きだ-



あの日からあの文字がわたしの心を占領していた。


再生されたままのDVDの明かりが潤くんを照らしている。
近づく距離と不安気な眼差しが愛おしさを強くする。
わたしの瞳には誰がうつっていますか?
心は誰を求めてるの?


0センチで伝わった熱の真実は…
わたしは潤くんの頼りない腕をギュッと強く抱きしめていた。



苦手な腕枕をされながらも幸福感に満ちていく。
ギュッと寄りそってお互いの熱を確かめ合う。


「あこと居るとスゲー落ち着く…」


少し眠そうな目をした潤くんが、わたしの頭を撫でながら言った。


照れてうつむいたわたしを見て、潤くんは天井を見つめた。


「仕事…辞めよっかなぁ…」


あまりに本気っぽいトーンで言ったから、わたしは声の調整が出来ず「へっ!?なんで?!」と大きな声が出てしまった。潤くんはそんな事には動じず。


「一緒の職場だから毎日のように会えるのは嬉しいんだけどさ…前も話したやまうらさんの件と…
あと、あの店つぶれそうだと思わない?笑」


「確かに暇すぎるけど…笑」


「まぁ一番は、やまうらさんなんだけどね…」


「相変わらずなの?」


「相変わらずだよ!ひどい時は2時間くらい休憩行きっぱなし…オレ嫌われてんのかな?」


そう言って苦笑いをする潤くんにわたしは言った。


「嫌われてるなんて絶対にあり得ないよ!店長だって、やまうらさんだって潤くんの事いつも褒めてるよ!すごく仕事が出来て真面目でいいこだって言ってるよ。」


わたしは必死に潤くんに伝えていた。
潤くんは目を閉じて、ゆっくり話し始める。
その横顔は他の誰でもない…潤くんだった。


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