おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
救急車がきて、病院へ行って…
いろいろ聞かれたりしたけれど同じ職場で…という情報しかもっていない。
わたし自身もいっぱいいっぱいになっていて、何が何だか覚えていないくらい慌ただしく過ぎていた。
気がつけば病室のベッドで、酸素マスクと点滴をつけて寝ている佐藤くんの手を握っていた。



何十分か、何時間か…
落ち着いてきた呼吸に少し安心した。
佐藤くんの手を握りながら、もう片方の手で携帯のメールを打つ。
心配して電話やメールをくれていた彼と、潤くんそれぞれが納得する様な内容のウソメールを…。
送信して、すぐに返信された優しい言葉達に胸がすごく傷んだ。
わたしは…誰ともしっかり向き合っていないんだ…
ただドキドキしていたい、ときめいていたいだけなのかな?


繋がった手の上にポタポタと落ちた涙は濁りない透明で、本当にわたしの目から流れているのかと疑うほどキレイだった。


一瞬佐藤くんの手がピクッと動いた気がして様子を見たけど、まだ目を開けてはいない。
仕切りのカーテンの向こうから声が聞こえて、わたしは慌てて涙をふいた。


「ご家族は?連絡取れた?」


「母親には連絡いったみたいだけど、本人に任せますって」




-母親はなにしてるかわかんねぇし…-



あの日の佐藤くんの言葉が響いた。


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