おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
わたしの目はキラキラと輝いたと思う。

「えっ、いいの?」

「いいよ!」と、クールに背を向けたやまやまに「ありがとう」と言った。

いつもはイタズラな悪魔に見えるやまやまが、神のように見えた。

「じゃあ準備するねー!」

と、遠慮なくバックヤードに向かおうとした時、

「今、オレが天使に見えたでしょ?優しいでしょオレ!」

とふざけるやまやま。
自分でわざわざ言わなきゃいいのにと思いながら、

「見えた見えた、初めて天使にみえた」

と、返事をしてバックヤードへ急いだ。


髪をほどいて、着替えてメイクを直す。
ドキドキとソワソワ感が呼吸を浅くしていく。
1月初旬の今にも雪が舞いそうな夜…ミニスカートにニーハイソックス。
寒さなんてこれっぽっちも感じなかった。

トイレの全身鏡で最終確認をして、気合の入ったように見えるであろうこの姿に不安さえ感じる。


この日まで何度もシミュレーションしたのは、水島くんの車に乗り込む瞬間まで。
それ以上を考えようとしても、少しも頭が働かなかった。

キッチンへ戻るとやまやまはわたしを見た。
服装について絶対になにか言われると思ったのに何も言ってこない。
と、思ったら…

「もう今日、ホテルに連れて行かれちゃうんじゃない?」

なんて、ニタニタし始めた。

緊張で震えそうな中のやまやまの意地悪は、わたしには有難いのかもしれない。
一瞬だけど緊張がほぐれて笑っていられるから。


< 86 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop