溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
言われた瞬間は瞬きも忘れた。でもすぐに納得した。ああ・・・そうか、罪滅ぼし。

火葬場に移動する前だった。お手洗いを済まそうと席を立ち、控えのホールに戻ろうとして、陶史郎さんのお父さんが数人と立ち話をしていた。

『若が沢崎の娘を引き取るってぇ話は本当か?』

『いくら気が咎めるったってなぁ』

『堅気でガキだろう?どっちにしたって、若には釣り合わねぇなぁ』

『・・・まあしばらく好きにさせるさ。償った気になりゃ、いずれ飽きる』

最後に言ったのが組長さんだった。

好い人なんだって知ってたから。陶史郎さんは身寄りが無くなった自分を放っておけないだけだ。自分の代わりに死んだ男の娘を見捨てられないだけ。

知ってた、優しい人だって。だから飽きるまで・・・、この人の気の済むようにさせてあげよう。この人を哀しくさせるのは、きっとお父さんも淋しいと思うから。

陶史郎さんが笑うのが見たいから。それで少しでも重荷が減るなら。

『・・・・・・すぐには無理』

逃げてれば、そのうち飽きる。
彼の居場所はここじゃない。
自分じゃない、傍にいるべき人は。

・・・・・・知ってた。ずっと。
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