溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
表向きは事故。本当は抗争がらみの襲撃だった。

事務所前で陶史郎さんが車に乗り込む寸前、刃物を手に突っ込んできた男の前に咄嗟に立ち塞がったのは父だった。息子の命の恩人だと、見舞金を差し出して組長さんが娘の自分に頭を下げた。

陶史郎さんを助けられたなら文句は言わないだろうけど。・・・口には出さなかった。赦すのも責めるのも自分の役目じゃないと思った。

支倉組が用意してくれたお墓に納骨が終わった翌日。身内がいなくなった自分の後見人を、弁護士の窪田さんが引き受けてくれるのを、アパートを訪れた陶史郎さんが伝えてくれた。

父の遺品と呼べるものは、数枚の写真しか入ってない薄いフォトアルバム1冊きり。赤ん坊と母のツーショット、小学校と中学校の入学式。

父親らしい感傷を持ち合わせてた人だったのかと。・・・重ならなかった。遠い人のまま逝った。娘を一人遺して。

そして陶史郎さんは、向かい合った自分に言ったのだ。

『樹ちゃん。僕のところにお嫁においで』
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