王子様と野獣
再会して、モモちゃんがあまりにも変わっていなくて驚いた。
嫌なものは嫌だと、子供のように反応する。くるくると表情を変え、空気を読まない発言もするけど、なぜか憎めない。
出来ないことは何とか習得しようとするし、人の悪意にもめげない。
社会人としてはどうなんだって思うこともあるのに、いつしか彼女の持つ空気に飲まれていく。
現に田中さんも、最初は不満そうだったのに今では彼女の世話を率先して焼くようになっている。
投げ飛ばされた阿賀野も、馬鹿にしているような言動はするが、彼女を仲間としてちゃんと受け入れている。
いつの間にか、彼女を中心として集団がまとまっていく。
それは俺にはない気質。
ふつふつと沸き上がってくる気持ちは、強烈な羨望と、どうしようもないような焦燥。
“俺もそこにいたい”
君のとなりに。君が作るネットワークの中心にいたい。
君の隣で、誰より君のそばで。君の特別な人じゃなくてもいいから。
そう思いながら、自分以外のやつが君の特別になるのは嫌だなんて、我儘もいいところだ。
“そう思うならやめればいい。お前の言う通り、もっといい男がいるだろうよ”
本部長の言う通りだ。
覚悟がないならやめればいい。それでもどうしても欲しいと思うなら、俺は過去を乗り越えなきゃならない。