王子様と野獣

報告書を見たあさぎくんは、調査会社に委託した駅前商店街での人口調査を参考にしながら、考え込んでいた。

「あとはここをどう持続させていくかだよね。今は運営主体がうちにあるけど……」

「運営主体を商店街に譲るんですか?」

「いや。……でも、うちの部署でずっと引き受けるのは違うと思う。あくまでも商店街に不随するスペースっていう位置づけだからね。商店街連合で運営するのも手だけど、商店街の繁栄が目的っていう前提を崩さないことを条件に、イベント運営に長けたところに権利譲渡するのもありかなとは思うね」

「そうなんですね……」

どれほど大変だったとしても、物事には終わりがある。
仕事をしていくということは、その終わりと次のはじまりを上手に切り替えていくことだ。
それが妙に実感として心に残った。

それからさらに数か月経ち、年度の終わりを迎える。
美麗さんが他部署に移動し、別の場所からふたり、事務担当の女性がやってきた。
そして、私の派遣期間は終わりを迎える。
あさぎくんは雇用継続しようかと言ってくれたけれど、断った。
笹谷木駅のイベント運営のようなことが、私のしたいことだと痛感したから。
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