王子様と野獣
その後、色々調べて、カルチャー教室を運営する【RTL】という会社に就職した。
社名は生きがいを意味する【reason to live】から頭文字をとったもので、その社名通り、どの年代の人も生きがいを見つけられるようお手伝いしますっていうコンセプト。

社長さんが女性で、笹谷木駅のイベントスペースを見に来てくれたことがあるらしく、私がそれに携わっていたことがあると言ったら採用を即決してくれた。
みたび一から始める社会人生活は大変だけど、やりたいことをやれているから充実はしている。

そんな感じの水曜日の午後二時。
日曜日の代休をもらった私は、遅めの昼食を取りに【宴】にお邪魔している

「別にうちで働けばいいのにー」

休憩中のあさぎくんのお母さん……もとい、茜さん(そう呼べと言われている)が唇を尖らせて言う。

「【宴】は人員足りているじゃないですか」

【宴】はそこまで大きな店じゃないので、あさぎくんのご両親にアルバイトさん数人で十分まわしていける。

「足りてるけどさ。話し相手が欲しいのよ。最近は萌も手伝いに来てくれないし。ねぇ、モモちゃん、浅黄と結婚しないの?」

あさぎくんとは半同棲状態で、両方の親が私たちが結婚すると言い出すのを待っているような状態だ。
あさぎくんは完全に乗り気で、いつでも言い出せるよってな様子で指輪まで用意してくれている。
私が、もう少し仕事に慣れるまで待ってほしいとお願いしている状態だ。
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