アッファシナンテ

花恋「いいわよ、別に。
お世辞なんて言わなくたって。」

春川「忘れていました。
お嬢様は昔から私の事を
本当に大切にして下さっていた事を。
覚えていますか?この蝶ネクタイ。」

花恋「蝶ネクタイ?」

春川「お嬢様が高校生の頃
家庭科の授業で作って下さったんです。
平岩さんから受け取った蝶ネクタイが
私には似合わないとお嬢様の手で
作ってくれた蝶ネクタイを私は
今日までずっと大切に使ってきました。
昔からお嬢様は変わらぬ優しさをお持ちです。
お嬢様の気持ちを考えなければ
ならなかったのは私の方でした。
無礼な事をして本当に申し訳ございません。」

花恋「そんな昔の話忘れたわ。」

春川「お嬢様。執事なんて
労わなくてもいいのですよ。
お嬢様が不快な思いをされたのなら
捨ててしまえばいいのです。
私はお嬢様に失礼な事を
言ってしまったのですから。」

お嬢様は私の横を通り過ぎ
ダイニングへと向かう。

花恋「春川。今日は
赤ワインが飲みたいわ。」

春川「え?」

花恋「あなたが選んでくれるかしら?
今日のディナーに合うワインを。」

春川「かしこまりました。」

お嬢様の温かさに
私は一筋の涙を流した。

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