アッファシナンテ

~春川side~


言わなければ良かったと後悔した。

それからしばらくお嬢様は
自室から出て来なくなった。

朝昼晩とお嬢様の部屋の前に
置いておいたお食事のお皿が
空になるとホッとする。

それが、唯一の生きている証だったから。

ショックを受けるのは当然の事だ。
つい最近まで一緒にいた人の
死を告げられ、平然としていられる
人間は、ほんの僅かだろう。

...人の死を目の当たりにした事の無い
お嬢様なら尚更。
それは当然の事だった。

それでもやっぱり心配だから
私は、お嬢様のお部屋を
何度も確認しに向かった。

お嬢様が何か言葉を発した時
1つも聞き逃したくはなかった。
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